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PRAISE - CINEMA - Stay Alive! - 本橋成一監督「ナージャの村」

元町映画館にて公開中の『ナージャの村』を観てきました。86年のチェルノブイリ原発事故によって汚染され立ち退き地区に指定されたベラルーシ共和国ゴメリ州ドゥヂチ村。村は事故後地図上から消され、外部の人間は許可証がないと入れません。『ナージャの村』は立ち退き要請後もそこに住み続ける6家族の生活を映した作品です。

Naja.jpg

本作品は写真家である本橋成一氏の作品だけあって映像が美しい。社会派ドキュメンタリーにありがちな拳をつきあげるような叫びやあからさまな問題提議も一切ない。大地とともに静かに生きる人々の姿が四季を通して映し出される。

村の人々は(ある1シーンのみを除いて)原発事故に対する不満を一切口にしない。映画の冒頭、「人間が汚染した大地をどうして私たちが見捨てることができようか」という文字が画面に映し出される。村民が事故を起こしたわけではない。しかもドゥヂチ村の住民は原発の恩恵をまったく受けていなかったという。それなのに、彼らは事故への不満や憤りを口にするどころか、この事故を大地に対する人類全体の責任としてとらえているようにも見える。彼らにとって自分たちが生まれた故郷の大地とは自分でもあり、自分も大地の一部なのであろう。故にそこを離れるか離れないかということは、そこが汚染されているかいないかという問題に左右されるようなことではないのであろう。村民の一人ニコライは言う:「天国はいらない。故郷をくれ」

作品に登場する人物の中でとりわけ私が気に入ったのが老婆チャイコ・バーバである。彼女は放射能汚染に対する不安や不満は一切口にしない(或いは、まったく気にしていない様子である)。彼女は日々自分たちを生かしてくれる野菜や山羊のミルクや馬や季節の移り変わりのほうが心配でしようがないようだ。自分の家で飼っている耕作用の馬が行方不明になったと半泣きになっておろおろするバーバ。台所で子猫に話しかけるバーバ。山羊のシロから毎日コップ一杯のミルクをもらい嬉しそうなバーバ。傑作シーンは、ミルクを毎日出してくれるシロが死んだとき「シロの遺骸を外に置いておいたら犬に食べられてしまった。かわいそうに...」と哀しみに暮れるバーバに対し、息子のチャイコ(名前が紛らわしいですね)は「でも犬は満腹だ」と言い捨てる。そしてこのくだりは二度繰り返される。コントのような会話で笑ってしまうのだが、どんないきものも命を頂いて生きているのだなという現実をこの村の人たちは意識せずにわかっているのだと考えさせられるシーンである。


現在日本でもこの村と似たような状況(そして展開次第では今後同じ道をたどる可能性もゼロではない)にある町や村がいくつもあります。政府が強制避難区域に指定した地域にあって冷静にその指示に従い避難した人々、指定に従わず(それぞれの事情があり)残った人々、指定区域でなくても自主的に避難した人々。このような人々に対して補償のあり方が異なってはいけないということを政府は理解すべきでしょう。とった行動は違うにせよ、失ったものは結局同じなのですから。本作品『ナージャの村』を責任ある立場の人間に是非見てもらいたいと思うのですが、今の政府にこの美しい作品の底にある静かで繊細な叫びや哀しみがわかる人は果たしているのかな?とも思ってしまいました。(まあ、大連立やら原発問題やらで映画など見てはくれないでしょうが...)


最後に本作品で私が最も好きなシーンを。
春が近い冬のある日、雪に覆われた畑を前にチャイコ・バーバは大地に話しかける:
「暖かくなったら 仕事にとりかかろう。タマネギ、ライムギ、キュウリ、じゃがいも。暖かくなったら 種を蒔こう」



「ナージャの村」
製作:1997年 日本・ベラルーシ
企画・監督:本橋成一
製作総括:鎌田實
製作:神谷さだ子、小松原時夫
撮影:一之瀬正史
語り:小沢昭一


私的評価:★★★★★ 90点
ポレポレタイムス社HP: http://movies.polepoletimes.jp/nadya/
神戸・元町映画館公式HP: http://www.motoei.com/


ココB_488
写真:映画を観た後のセルフポートレイト。神戸市中央区下山手通4丁目ココシュカ跡で

*こちらの記事は新映画サイト『KOBE Day for Night 神戸で映画を』に引っ越しました。そちらのサイトもあわせてよろしくお願いします(2011年10月23日)


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Comments - コメント一覧

From : CapeDaisee : fooさま

fooさま

はじめまして。コメント&フォロー、ありがとうございます♪
元町映画館は一番前がとっても観やすくて「自分だけのスクリーン♪」感がすごく楽しめますよ。
5回観ると一回無料という太っ腹ぶりもすごいです♪
毎週でも行きたいですが、お金と時間に制約がありますので。。。

映画は、まずは頭でついていく必要はないと思います。感じればよいと思います。
で、感じたら、自分なりに考えに考えれば劇場で観えなかったものが見えてくることがあります。
でもとりあえずは楽しんで「スキ」か「キライ」が重要だと思います。
私なりの観て感じて考えたことをちょくちょくブログに書いていますんで、こんな風に解釈するアホもおるんやという感じで参考にしていただけたら幸いです♪

よろしくお願いします。

From : foo :

はじめまして。
元町映画館のことでリツイートして下さってありがとうございます。
5月から数年ぶりにまた元町近辺に出没することが多くなったので映画館にも足を運ぼうと思っています。
映画の奥深さに頭がついていけないのですが、まわりの映画通のご意見を参考にしながら自分なりに解釈していけたらいいかなぁって。
これからもどうぞよろしくお願いします。

From : CapeDaisee : Re: ほんまや!日本の政治家みんな観ろ!

ちょいばかおやじさま

良い映画だったでしょ。しみじみと心にしみます。

私も、子供がいたら別ですけど、あのような状況になったらどこへも行かないような気がします。。。

ナージャや村民の皆さんのその後がとても気になるところ。白血病や癌になっていないかしらと。
色々調べているのですが、まだ全くわかりません。。。

検診の合間をぬって観ていただいて本当に嬉しいです♪お疲れさまでした♪

From : ちょいバカおやじ : ほんまや!日本の政治家みんな観ろ!

『ナージャの村』ほんとにいい映画でしたね!
農村の日常を淡々撮っていて、村人の以前と変わらぬ生活を観ていると、ここが取り返しのつかない汚染されている現状に余計に胸が痛みますね。

でも、私達が当事者だったら、あんなにも冷静に堂々としていられるのか?
まず無理ですね。何もかもほっぽりだして逃げ出してしまうでしょうね。

チャイコバーバのキャラはいいですねー!とにかく、毎日を精一杯生きることだけ。そして来年、先の事をちゃんと見据えている。

ナージャは非常に可愛い子供なのですが、それだけに時々みせる深刻な表情がとても気になりました。

capeさんのご指摘のとおり、声高に抗議をし荒立てる場面もなく、一幅の絵画のような美しい映像が返って事故の重大さと人間の愚かさを観る者にしっかりと訴えていたと感じました。

神戸映画サークルでも数年前、本橋成一監督の『ナミイと唄えば』を上映しました。沖縄の80何才現役芸者さんのドキュメンタリーですが、彼女の人生と、友人達、そして戦争に巻き込まれた人達の記憶を綴る見事な作品でした!

今回はホントcapeさんのみごとなレビューを読ませて頂いて急遽ギリギリ何とか『ナージャの村』を観ることができました♪

次もまたよろしゅうたのんます!謝謝♬
(^_^)/

From : CapeDaisee : Re: 人間は生きて、死ぬ。

おもしろさま

コメントと、それに素敵な引用、ありがとうございます!

> 私はこの映画を見ると、泣けて来ます。悲しくてという感じでもなく、どちらかと言えば、
> 愛おしくて泣けて来ます。自然に。
> そして良く冷静に考えると、悲しく泣けて来ます。

ああ、そうそう、同じです!!
なんだかよくわからないけど胸が熱くなります。
そして後で考えると悲しくもなってしまいます。

ドラマチックな演出も筋書きも何もないのに、
胸が一杯になりますよね。
「命を大切にしましょう」とか、そんな簡単な言葉では
表現できないような命の詩を感じます。

レビュー中にも書いておりますが、特にチャイコバーバーの
大地や山羊や子猫や豆やおいもさんなんどのつきあいかたが
とても好きです。

明日で上映終わりですね。残念です。延長はできないもんでしょうか。。。w

From : おもしろ : 人間は生きて、死ぬ。

元町映画館にお越し下さいましてありがとうございます。
というより、何よりこの映画を体験してくれてとても嬉しいです。
私はこの映画を見ると、泣けて来ます。悲しくてという感じでもなく、どちらかと言えば、
愛おしくて泣けて来ます。自然に。
そして良く冷静に考えると、悲しく泣けて来ます。
私はこの映画を好きな人は、無条件に好きです。

この映画はアルカジイ・ナボーキンというお爺さんに捧げられています。
パンフレットの最後に書いてあった、本橋さんのコメントを転載します。

「何故、汚染された土地を離れないのか」と私。
「人間が汚した土地なんだよ」老人はつぶやく。
「逃げ出すわけにはいかないのさ」。
私たちが失ってしまった、母なる大地への敬虔な姿。
1年後、その老人を再び訪ねた私は、予想もしなかった悲しみに出会う。
その老人は、牛泥棒に殺されていた。
私の中に大きな命題を残したまま、彼は逝ってしまった。
失意の私を立ち向かわせたのは、映画をつくるという行為だった。
彼と同じようにこの地に棲み続ける6家族の肖像に、
再び彼の姿を見たかったのかもしれない。

ーーーアルカジイ・ナボーキンに捧げる
監督・本橋成一
パンフレットにはその老人だと思われるおじいさんがアコーデオンを
持って部屋の中で写真に収まっています。

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Born and live in KOBE, JAPAN.
Love Hanshin Tigers, beer and cute tiny things.

神戸市出身・在住 女性
御多分にもれずタイガースファン。
何かを作るのが好きなので そして仕事と家事に忙殺されぬよう ジャムを煮たり写真をとったりしています。おうちで作るジャムのおいしさと神戸のいいところを伝えられれば幸いです。
好きな映画や本や音楽やモノやコトについても時々書いています。
でも最近は写真ばっかりだな...

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