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PRAISE - CINEMA - 中島哲也監督 「嫌われ松子の一生」

松子AO320-224
汚臭漂うゴミアパートに住む醜く太った中年女性が河原で中学生集団に撲殺される。物語はこのような救いようの無い、でもそう珍しくも無いような設定から始まる。彼女の名前は川尻松子、53歳。彼女は元々貧しい家に生まれたわけでもない。中流の安定した家庭に育ち、学校を出た後は地元で中学の教師に。ある事件をきっかに
教師を辞めたことから松子の人生はおもしろいように転落し始める。

松子は自分だけの閉じた世界に生きる女である。外の世界とのバランスを著しく欠いた人間なのだ。そんな松子が無意識のうちに求め続けたものは、自分を無条件にそして永遠に愛してくれる『揺るぎないもの』の存在。

松子の不幸は明らかに、親から愛されていないという思い込みに端を発する。病弱な妹だけが父から愛され自分は愛されていないという思い。無条件の絶対的な愛を実感できなかったことが、松子が『閉じた世界』に生きることとなった理由である。極彩色のミュージカルシーンや妄想シーンを悲惨な人生をソフトに見せるための効果と述べる人が大勢いるが、果たしてそうだろうか?実はこれらはまさに松子の閉じられた世界なのでは。純粋すぎる、しかしわかりやすく言えば、外を見ようとしない、学習しようとしない、単純に言えば馬鹿なナルシスト松子の幻想の象徴である。これらのシーンが"ポップ"であり、悲惨な状況でも"前向きな"松子に救われるというコメントをいくつか見かけたが、私としてはそれはとんでもない。松子が明るく歌って踊れば踊るほど、自分しか見えないその姿はむしろ滑稽で哀しく、胸がしめつけられる思いがするのである。

MATUKOEGAO.jpg
松子は馬鹿ではないので反省していないわけではないのである。毎回男との関係が悲惨な結果に終わるたび「なんで?」と呟く松子。そう、「なんでこんなことになるの。ああ、これで私の人生も終わり」と一瞬は考えるのである。しかし、それはほんの一瞬のことであり、喉元過ぎればではないが、すぐに次なる自分の世界、自分を必要としてくれる者、揺ぎない愛を求めて直進することとなり、その時にはも
う以前の「なんで?」は彼女の頭にはないのである。こうして繰り返される不幸への猛進ループ。再びカラフルな松子劇場が開始されるのだ。

松子が数々の人生の失敗を学習しようとはしなかったとしても、その心には見えない傷跡は確実に蓄積される。それ故、ようやく見つけたと信じた『揺るぎないもの』、一生添い遂げるのだと信じた男である元教え子から終わりを告げられた時には松子の中で本当に何かが終わってしまうことになる。もうナルシスト松子は自分すらかえりみようとはしない。ゴミだめのようなボロアパートに暮らし、菓子を食らってぶくぶくと太り、精神科へと通う中年女性。生活はおそらく生活保護などの援助を受けていたのであろう。そして最後には河原で注意した中学生の集団に撲殺される。

基本的に、愛を求めて相手につくす人間は実はナルシストなのかもしれない。

愛して欲しい、愛して欲しいと、純粋に生き続けた松子が死して最後に行き着いた先では、あの憎みに憎んだはずの妹が「おかえり」と待ち受ける。「ただいま」と微笑む松子。実は松子はずっとこうしたかったのである。彼女が求め続けたものは「おかえり」の一言だけなのだ。私はこのエンディングで少しだけ救われるとともに、松子の気持ちが僭越ながら痛いほどわかって涙がとまらなかった。死んでからじゃ遅いんだよっ!と仰る方もおありでしょうが、生きているうちに学習して賢明な選択ができるような女だったら松子ではなかったのです。

ここまでこのように書いてみると、表面的には松子が非常に愚かな女であるようにも見えるが、中島監督はそんな松子を決して見捨ててはいない。むしろ、哀れみつつも愛情を持って描いていることがこのエンディングの演出からうかがえる。

この映画を観た人のリアクションは大きく2つにわかれると私は考える:こんな転落って現実ではそうないやろと、他人事としてとらえられる者。自分或いは知っている誰かを見るようで震えあがる者。前者はおそらく、悲惨なストーリーを見事な作品に仕上げた中島監督の手腕や中谷美紀の演技に賛辞を送るだけにとどまることが多いのでは。後者の人間にとってはこの映画は恐怖でもある。胸をえぐられるような作品となる。ただただまっすぐに純粋さを保って生き続ける人間には、現実社会では御伽話のようなエンディングはそうそう待っていないのである。だからと言って、賢い生き方ができるはずもないのだが・・・



「嫌われ松子の一生」
製作:2006年 日本
監督・脚本:中島哲也
原作:山田宗樹
出演:中谷美紀 伊勢谷友介 黒沢あすか 柄本明
私的評価:★★★★★ 90点


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PRAISE - BREAD - PAUL BOCUSE - クロワッサン風ハードトースト

パン俯瞰全320-204
神戸のデパートと言えばそごうと大丸 (昔は三越もありましたが)。そごうのワサワサとした感じの方がどちらかと言えば好きなので大丸はしょっちゅうは行かないのですが、先日試食パーティを敢行しました際にポール・ボキューズさんですごく気になるパンを発見しました。その名も『クロワッサン風ハードトースト』。
パンスライス2_233-220パン断面大_233-220

ハードトーストというくらいだからハードなんだろうけど、それが『クロワッサン風』とはどういうことでしょう?興味津々です。大きさは写真で見て横幅が25センチほど。これを6枚に切ってみました。この点に関してはやや失敗。もう少しだけ薄めのほうが良かったかもしれません。しっかりトーストすると外側の皮がパリッ、サクッとしてとても美味!中の生地はなんというか、普通のトーストパンとクロワッサンを足して2で割ったような(わかりにくい説明でスミマセン)... パンの底には結構バターが染み出していたのですが、思ったほどバターバターはしていませんでした。また、甘みも塩加減も控え目な感じです。要するに、見た目よりずっとあっさりしていて美味しいです。

毎週末のパンモーニングは私のささやかな楽しみ。大体はドンクハードなんですが、たまにこういう変わりダネ(しかもクロワッサン!クロワッサンってなんか優雅な気分になれません?)を食べるのもテンションが上がって楽しいもんです。



ポール・ボキューズ神戸大丸店
神戸市中央区明石町40番地 神戸大丸B1階(元町駅浜側)
大丸影320-223



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PRAISE - GOURMET - UDON - 讃岐うどん民藝のきつねうどん

民藝店より320-224
以前にもちらりと書いたのですが、神戸元町にはうどん屋さんが少ないです。恐らく中華料理屋の発展の影響ではないのかなと個人的には考えています。しかしながら、ここ数年の讃岐うどんブームによりちらりほらりと美味しいうどん屋さんが元町にも出来てきています。その中で数年前には私の中で断トツ1位の美味しさを提供してくれていた
お店が『民藝』さんでした。で、ここで一つお断りです。民藝さんのうどんには強いコシがあって噛めば噛むほど甘みが出てきて、それはそれは素晴らしい味、それまで私が食べたうどんの中で最も美味しいうどんでした。人に教えたくないほど美味しかったので大阪の知人などには絶対に秘密にしていました。それが数年前のこと、あくまで私の推測ですが恐らく小麦価格高騰のせいでしょうか、ある日突然、なんだか麺の味が少し変わったのです!依然としてとても美味しいのですが、以前の天にも昇るような美味しさではなくなったんです(涙)。私は「値段をたとえ200円上げてもいいから以前のものに戻してください」と手紙を書こうかとまで思ったものです。だから現在の民藝のうどんは絶頂期のものよりほんの少しだけ、ほんの少しだけ劣るかもしれません。でも美味しくなくなったわけではありません。まあ、以前のが百点満点中120点だとしたらそれが90点になったというような感じでしょうか。しかしやはり、神戸・元町三宮エリアでは前にご紹介した雀さんとこの民藝さんがTOP2ですので!

うどん中320-224
民藝さんで一番好きなのはきつねうどんです。無料のてんかすが各テーブルにおいてありますのでそれを入れればハイカラきつねうどんになります。写真でもおわかりのように、おあげさんが特大サイズで、しかも2枚入っています(故に肝心の麺が写っていませんが...)!麺はコシがあって少々固め、よく噛んで味わうと美味しさが倍増しま
す。出汁は関西風ですが、きつねうどんの場合はおあげさんの甘みが溶け出して結構甘くなっています。この甘みが私は好きなので いつもきつねうどんを注文します(もしかしたら、甘いおあげさんというのは讃岐うどんではないのかも...つまり私は最も味わうべきものをここで食べていないということかもしれません...)。麺の量はかなり多目で少食の人はこれだけでお腹がいっぱいになります。でも人によって満腹ラインは違うでしょうから参考までに言いますと、ビッグマック1つでお腹いっぱいという人基準です。写真の右上にある黄色い物体は柚子の皮で、これがなんともいえないアクセントとなっています。そしてご覧のとおり、私の大好きなお葱がたっぷり。これで600円はそう高くないと思います。

民藝さんは元町商店街の1本上(山側・北側)の狭い通りにあります(大丸側からだとコロッケで有名な森谷さんの角を西に曲がって5分ほど)。お店と車と人がごっちゃになっている通りなので、車に気をつけてください。土日のお昼は行列ができていることもあります。



純生讃岐うどん 民藝
神戸市中央区元町通1-14-3
民藝看板320-224


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PRAISE - BREAD - ANDERSEN - アンデルセンのデニッシュブレッド

G_NANAME2_320-224.jpg
前回に引き続き広島を本拠地とするアンデルセンのパンです。広島という土地は、タイガースも随分とカープにお世話になってるような気がするし、大好きだった神戸の市電の車輌が走っているということもあるし、奥田民生の出身地でもあるしということで、ちょっと親近感のある街。
今回ご紹介するのは『デニッシュブレッド』。アンデルセン
はなんでも日本に初めてデニッシュペストリーを紹介したパン屋さんだそうです。これはパン好きとしては食べてみないわけにはいきません。デニッシュは大好きですし。

デニッシュブレッドを食べるときはしっかりとトーストすることをおすすめします。そうすることによってデニッシュの命でもある表面のサクサク感がより一層まして美味しいのです。生地には『あられ糖』が練りこんであるそうで、ほんのりと甘みがあります。なのでフルーツ系のジャムよりも、バターだけ、又はバター+蜂蜜のトッピングのほうが合うかと思います(私はバター+蜂蜜がお気に入り)。いつも紹介しているハード系トーストと違って、全体にホロホロ、サクサクとした軽い食感でお菓子感覚で食べられます。しかしながら、デニッシュなのできっと生地にバターが練りこんであるのでしょう、お腹へのインパクトは結構強くて、思ったよりも腹持ちがいいです(つまりお菓子っぽいけど、意外に朝食向きということ)。

表面の"なみなみ"っとした模様によって気分がちょっと普段とは違ったものになり、テンションをちょっとだけ上げてくれますので、たまにこういう変わりだねパンを週末の朝食に食べるのも、とっても安価に旅行したような気分になれていいもんです。



アンデルセン神戸そごう店
神戸市中央区小野柄通り8-1-8 そごう神戸店B1F
URL: http://www.andersen.co.jp/


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PRAISE - COMEDY - 究極のリアリズム - VISUALBUM 松本人志

shinsetsu153-214.jpgyakusoku153-214.jpgannshinn153-214.jpg

ブルー・スリー、ひばりさん、裕次郎さん etc.と、多くのスターの方々が亡くなっても深く深く衝撃を受けることはありませんでした。皆、ずっと年上であり、歳が上の者から亡くなっていくのはある意味当然のことでありますから実感があまりないのかもしれません。でも、まっちゃんが死んだらちょっと受け入れるのが難しいかもしれません。そういうことですので本記事はもしかしたら客観性に欠けるかもしれません...(いつもそうですが...)

『ヴィジュアルバム』はダウンタウンの松本人志が98年~99年にかけて制作したコント・ビデオアルバムでありまして、りんご『約束』、バナナ『親切』、ぶどう『安心』の3本からなります。後に発売されたDVDボックスでは特典『メロン』がついていますが、こちらは見ていません。よって、以下に記すことはまっちゃん本人がこのメロンの中で述べていることとずれる可能性もあるのですが、あくまで私の個人的な想いということで...

ヴィジュアルバムについての愛を書こうと思いたったとき、他の人はなんて言ってるのかしら?とちょっと気になり検索してみましたところ、"シュール"という意見を多数発見しました。AMAZONのDVDボックス商品紹介でも「シュールで不条理なコントを満載」と記されています。私としては「えーっ!シュ、シュール???」と仰天 (何分、外部とのつきあいが非常に少なく、唯一の会話相手である相方も私以上のまっちゃんファンなので外の意見をよく知らないのです...本ビデオが出た頃は文系の人間はネットなんてほとんど使用しない媒体でしたので、外の意見や情報も簡単には入ってきませんでした...)。これは一体どういうことだろうということで、"シュールであること"の正体(ちょっと大袈裟)について少し考えてみました。

単刀直入に私の考えを述べさせてもらいますと、ヴィジュアルバムは"シュール"どころか、まさに"リアリズム"なのです。あそこに描かれているものは『狂気』でも『シュールさ』でもなく、普通の人間の普通の営みなのです。本人たちは真剣にやっているのに客観的に見るとおかしなことがこの世には沢山あります (というか、そんなことだらけです)。そのおかしげなことや言動を見聞きするとき、たぶん多くの人はその"異常さ"を見ないように、つまりある程度情報を選択して、見ているのではないでしょうか?ヴィジュアルバムではその"変な"部分を他よりちょっと (時にはかなり) 強調して、或いはアングルや設定を少しだけ変えて、我々に見せているだけです。あれは、まっちゃんの中に蓄積する、彼が幼い頃から見てきたおかしげな人々そしてその記憶の再現なのです。ただし、彼が選択して自分の中に蓄積してきた部分は普通の人ならわざと見ない部分です。多くの人は現実をつきつけられると不快感を感じます。これが本作品を『気持ち悪い』と呼ぶ人がとても多い理由の一つでもあります。本作品の画像を見ないで音だけを聞いてみると、かなりのものが"普通の"変な会話にすぎない、つまりとても"リアル"であることに気付きます。

ここで多くの意見が聞こえてきそうです:「『荒城の月』や『げんこつ』、あれがリアルか?!」と。はい、リアリズムです。ただ、設定や見せ方が通常とはちょっとだけ異質なだけです。あんな人たちは会社の中にもスーパーにも山ほどいます。

こう考えてみて、思い出したのはデヴィッド・リンチ。彼の多くの映画もこのヴィジュアルバム同様、たびたびシュールであると評されますが、彼が示しているものは幻想でも夢でも超常現象でもなく、まさにリアリズム。同監督の作品の中では比較的"見やすい"ほうであるとよく言われているのが『ワイルド・アット・ハート』でありますが、あれは逆に、シュールとまでは言いませんが、"作り話"であり、一貫して"おとぎばなし"を描いているから安心して見られるのです (ハッピーエンドだったでしょ)。

で、こう書きますと、なんだかヴィジュアルバムが非常に"コンセプチュアル"で難しく、片ほほでニヤリと笑うようないわゆる"考えオチ"のようなもののように思えるかもしれませんが、なんといっても本作品の素晴らしい点は、それでも大笑いできる点です。単にブラックユーモアや気味の悪いものを散りばめるだけなら誰でも (誰でもは言い過ぎかな) できるかもしれません。あくまで、最終的には"大笑い"できなければ意味がないのです。また、大笑いできる大きな理由として、登場人物に対するまっちゃんの愛情が一貫して感じられるということがあります。単なる嘲りであったら私も多分笑えなかったのではないかと思います。

本稿を書くに当たっては本当はコントと漫才の違い、そして松本人志のコントとその他のコントの違いを中心に、本3部作の中から大のお気に入りのコントを例に書こうかと考えていましたが、ここまででやや長くなってしまいましたので、それはまた次の機会にします。ちなみに私の一番のお気に入りは『ZURU ZURU (ずるずる)』です!




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CapeDaisee

AUTHOR : CapeDaisee

Born and live in KOBE, JAPAN.
Love Hanshin Tigers, beer and cute tiny things.

神戸市出身・在住 女性
御多分にもれずタイガースファン。
何かを作るのが好きなので そして仕事と家事に忙殺されぬよう ジャムを煮たり写真をとったりしています。おうちで作るジャムのおいしさと神戸のいいところを伝えられれば幸いです。
好きな映画や本や音楽やモノやコトについても時々書いています。
でも最近は写真ばっかりだな...

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